159-衆-法務委員会-16号 平成16年04月20日
刑事訴訟法の一部を改正する法律案の提出
平成十六年四月二十日(火曜日)
午後三時五分開議
出席委員
委員長 柳本 卓治君
理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君
理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君
理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君
理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君
左藤 章君 佐藤 勉君
桜井 郁三君 中野 清君
早川 忠孝君 平沢 勝栄君
松島みどり君 松野 博一君
水野 賢一君 森山 眞弓君
保岡 興治君 柳澤 伯夫君
山際大志郎君 泉 房穂君
加藤 公一君 鎌田さゆり君
河村たかし君 小林千代美君
小宮山洋子君 辻 惠君
中井 洽君 松野 信夫君
富田 茂之君 川上 義博君
…………………………………
議員 河村たかし君
議員 辻 惠君
議員 中村 哲治君
議員 山花 郁夫君
法務大臣 野沢 太三君
法務副大臣 実川 幸夫君
法務大臣政務官 中野 清君
最高裁判所事務総局刑事局長 大野市太郎君
政府参考人
(司法制度改革推進本部事務局長) 山崎 潮君
政府参考人
(総務省自治行政局選挙部長) 高部 正男君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 寺田 逸郎君
政府参考人
(法務省刑事局長) 樋渡 利秋君
政府参考人
(法務省人権擁護局長) 吉戒 修一君
政府参考人
(財務省主計局次長) 佐々木豊成君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 金子 順一君
法務委員会専門員 横田 猛雄君
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委員の異動
四月二十日
辞任 補欠選任
松島みどり君 松野 博一君
同日
辞任 補欠選任
松野 博一君 松島みどり君
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四月二十日
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(河村たかし君外四名提出、衆法第一九号)
同日
成人重国籍の容認に関する請願(細川律夫君紹介)(第一六七三号)
同(手塚仁雄君紹介)(第一七一一号)
同(土井たか子君紹介)(第一七六四号)
同(金田誠一君紹介)(第一七七五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内閣提出第六七号)
刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)
総合法律支援法案(内閣提出第六九号)
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(河村たかし君外四名提出、衆法第一九号)
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○柳本委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案及び総合法律支援法案並びに本日付託になりました河村たかし君外四名提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
まず、河村たかし君外四名提出、刑事訴訟法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。河村たかし君。
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刑事訴訟法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○河村(た)議員 長らく検察、警察の聖域とされておりましたこの捜査の領域においてこういう捜査の適正化の法案が民主党から出されるということ、審議入りするということはすばらしいことだということをまず一言申し上げておきます。
刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
我が国の刑事司法の目的は、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することにあります。このように、我が国の刑事司法が適正手続の保障のもとでの事案の真相解明を使命とする以上、被疑者の取り調べが適正を欠くことがあってはならず、それを防止するための方策が必要であるとともに、また、被告人は訴訟の当事者として十分な防御の機会が保障されなければならず、被告人の不適正な身柄拘束の防止が求められております。
しかし、現実の刑事司法の姿はまことにいびつなものとなっております。
刑事訴訟法は、被告人と検察官を平等に取り扱っておりますが、現実は被告人と検察官では真相解明についての力量の差が圧倒的に違っております。このような状況下で、当事者主義のもと、検察側と弁護側の形式的な平等を貫くことは、実質的に被告人に大きな不利益を課し、真相解明から大きく外れる危険性を内包しております。
また、現実の裁判では、威迫的なあるいは誘導的な取り調べを受けて事実と違う供述をしたという主張がされ、供述調書の任意性が数多く争われているところであります。例えば、当委員会で多くの審議時間を割いた名古屋刑務所三事案は、八名の被告人のうち実に七名の被告人が因果関係を否定しその立証活動に及ぶとともに、威迫的なあるいは誘導的な取り調べを受けて事実と違う供述をしたと主張する大冤罪疑惑となっております。
被告人にとって、供述調書の任意性を否定する立証を行うことは非常に困難でありますが、検察官にとってもその任意性を立証することは非常に困難なことであり、裁判官は極めて厳しい判断を求められています。被疑者ないし被告人が事実に反する自白をすることがないよう、法制度の整備が求められております。
また、裁判員制度の導入についても、取り調べ、保釈の適正化は極めて重要であります。裁判官もかつては圧制者であったという歴史の教訓にかんがみると、司法への国民参加は大変重要であります。そうであるからこそ、一般国民である裁判員の前に事実に反する自白調書が提出されないよう細心の注意を払う必要があります。
捜査の必要性との調整も必要でありますが、保釈が自白の取引に使われているとの指摘にかんがみると、保釈除外事由の厳格化、取り調べ等の弁護士立ち会い、可視化は、一人の無辜の者も許さない、無実の者を誤って処罰することほど重大な不正義はないとの刑事訴訟の要請に合致し、時代の要請でもあり、強大な権力である検察、警察権の行使を適正化する必要な制度改革であります。名古屋刑務所三事案でも、一部を認めた被告人は三カ月で保釈されているにもかかわらず、その被告人以外はいわゆる権利保釈の事例である被告人でさえ皆一年以上勾留されている現実が厳然としてそこにあります。
この法律案は、このような状況にかんがみ、被疑者の取り調べ等について弁護人の立ち会いを認める制度及び被疑者の取り調べ状況等の録音、録画を義務づける制度を導入するとともに、権利保釈の除外事由を制限すること等を目的とするものであります。
以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一は、権利保釈の除外事由を制限することであります。保釈の請求があったときは、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる十分な理由があるとき等を除いては、これを許さなければならないものとすることとしております。
第二は、被疑者の取り調べ等の際の弁護人の立ち会いを認めることであります。被疑者の取り調べ等に際しては、被疑者または弁護人が求めたときは、弁護人の立ち会いを認めなければならないものとすることとしております。
第三は、被疑者の供述及び取り調べの状況等の録音、録画を行うことであります。被疑者の取り調べ等に際しては、被疑者の供述及び取り調べの状況のすべてを、映像及び音声を同時に記録することができる記録媒体に記録しなければならないものとすることとしております。
第四は、自白の証拠能力を制限することであります。弁護人の立ち会い及び取り調べ状況等の録音、録画に違反してなされた取り調べにおいてされた自白は、証拠とすることができないものとすることとしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
以上でございます。
○柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
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○柳本委員長 次に、ただいま議題となっております各案について議事を進めます。
この際、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、財務省主計局次長佐々木豊成君、厚生労働省大臣官房審議官金子順一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○柳本委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○柳本委員長 これより質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮山洋子さん。
○小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。
民主党提出の刑事訴訟法改正案につきまして、主に提出者に伺いまして、また何点かは政府の考え方を法務大臣にも伺っていきたいと思います。
まず初めに、今、提出の理由説明がございましたけれども、提出者からこの改正案のポイントを説明してもらいたいと思います。
○河村(た)議員 これは間違うといけませんから、ちゃんと読まさせていただきます。
本改正案の主な内容は次のとおりでございます。
被疑者の取り調べ及び弁解録取手続に際しては、被疑者に対し弁護人を立ち会わせることができる旨を告知することとし、被疑者取り調べの場合は、弁護人も含むが、弁護人の立ち会いを求めたときは、これを認めなければならないこととしました。百九十八条二項、五項、二百三条一項等でございます。
また、弁護人を選任していない被疑者が、取り調べにおいて弁護人の立ち会いを求めている場合や、弁解録取手続において弁護人の立ち会いの上での弁解を求めている場合には、弁護人が選任されるまでの間、取り調べまたは弁解録取手続を進めることができないことといたしました。百九十八条四項、二百三条一項等でございます。
それから二つ目ですが、被疑者の取り調べ及び弁解録取手続に際しては、被疑者の供述及び取り調べ等の状況のすべてを同時に同一の方法により二つ以上の記録媒体、百五十七条の四第二項参照ですが、に記録しなければならないこととしました。これは百九十八条九項です。
それから三つ目ですが、この記録媒体について、その一つを取り調べまたは弁解録取手続終了後速やかに封印の上、捜査記録に添付することとし、残りのものを被疑者または弁護人が閲覧、聴取、複製して、起訴前にその内容を確認できることとしました。百九十八条九項から十三項、二百三条四項等です。
四つ目。これらに違反してなされた取り調べにおいてされた自白については、証拠とすることができないことといたしました。三百十九条一項です。
五つ目として、被疑者の保釈制限事由のうち、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるとき」とされていたものを「充分な理由があるとき」に限定し、保釈が認められやすくすることとしております。八十九条四号でございます。
以上でございます。
○小宮山(洋)委員 昨年から取り組まれています名古屋刑務所の事案、これは、今回の立法にどのような影響を与えているんでしょうか。
○河村(た)議員 これは、私にとっては、私にとってはですが、この法案提出の立法事実としまして非常に大きかったということで、ビデオテープを当委員会の、去年ですかね、理事懇談会で全員で見まして、そこで言われた話が、当事者の人と話を聞くと全く内容が違っている。それから、放水の話も、当事者の話を聞くと全く違っている。そういう状況の中で、どうも取り調べというか捜査の中で、何か違法な、不当な取り調べというのはやはりあるんではないかと。
それから、保釈についても、いろいろ聞いてみますと、このままいったら出れぬようになるぞとか、そういうことでやむにやまれずありもせぬことを認めてしまう。そういうとんでもない、人質裁判というのか、真相究明に反する事実がこれはあるということで、これは大変なことだということで、私は、先ほども申し上げましたように、長らく聖域とされていましたけれども、やはり検察、警察のこの取り調べのところに民主的コントロールを及ぼすことが絶対必要であると。
私、ちょっとある人に聞きましたのですけれども、検察官も、主任がこういうふうに書けと言うわけですよ、これ。それで実際に調べ官が困っていると。そんなことおれは嫌だと言っても、上から言われたからやらざるを得ないと。こういうことではいけないので、この際はやはりちゃんと見えるようにして、弁護士もいて、保釈も出すときはきちっと出す、そういう法制度をどうしてもつくらにゃいかぬということが、あの名古屋刑務所の三事案の、大冤罪疑惑ですけれども、それが私に非常に大きな立法事実になって、この立法につながっていった。
以上でございます。
○小宮山(洋)委員 今回のこの民主党提案の法案は、弁護人の立ち会いのこと、それから取り調べの録音、録画、そして保釈の制限事由と、大きく分けると三つに分けられるかと思うんですが、まず、そのうちの最初の部分、弁護人の立ち会いについて何点か伺っていきたいと思います。
初めに、現在の日本の取り調べの問題点、これはどういうところにあるとお考えでしょうか。
○辻議員 現在の刑事裁判の基本的な問題点というのは、やはり自白偏重主義の捜査を前提として、自白偏重主義の供述証拠を軸として刑事裁判が運用されている、この点にあると思います。
戦後間もなくの八海事件とか、多くの冤罪事件が数多く生み出されただけではなくて、最近に至っても自白の証拠能力は否定される、自白偏重主義のゆえに冤罪とおぼしき事件が多々ある。これは、日本の刑事司法にとって、もう根本的に深く結びついた大きな問題であるというふうに思います。やはり、自白偏重主義の温床が取り調べである、密室における捜査官による取り調べが自白偏重主義の、やはり温存している制度である。
そういう意味におきまして、密室の取り調べをなくすること、このことが非常に重要である。弁護人の立ち会い権を認めることが非常に重要であるし、捜査の可視化と言われる録音、録画等もまた重要である、このように、取り調べの問題点があるというふうに考えております。
○小宮山(洋)委員 日本の取り調べのあり方、その制度につきましては、海外からも被疑者の権利が保障されていないと批判されているのだと思います。
今月合意しました日米地位協定の見直しですけれども、日本の国内で罪を犯したアメリカ兵の容疑者の刑事裁判手続の協議で、日本の警察が取り調べを行う際に、アメリカ軍司令部の代表者を同席させることを認めざるを得なかった、このことからもそのことは明らかなのではないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○辻議員 二〇〇三年の五月二十五日、沖縄県金武町で強姦致傷事件というのが起こりまして、米海兵隊員の引き渡しが問題になりました。この際、日米地位協定下の米兵被疑者の取り扱い、司法手続をめぐる協議ということが問題になり、つい先日、四月二日でしょうか、この問題について合意が成立したというふうにされております。
これは、外務省なり政府の説明によれば、米国側は捜査に協力するということで立ち会うんだということでありますが、率直に考えれば、やはり、これは取り調べ時において事実上第三者の立ち会いがあるということだと思うんですね。米国側は捜査の協力ということで立ち会うと言うんですが、多くの人々はアメリカにおいて弁護士の資格を持っている人である。そういう意味におきまして、弁護士的な機能も果たす人の同席をやはり認めざるを得なかった、これが世界の常識だというふうに思います。
そういう意味におきまして、我が国の捜査、取り調べ状況に弁護人の立ち会い権が認められないというのは、国際的に大きな問題である。批判にさらされている。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、韓国において現に弁護人立ち会い権が認められているという点、この点をやはりしっかりと受けとめて、日本の取り調べ、自白偏重主義の取り調べの構造を変えていかなければいけない、このように考えております。
○小宮山(洋)委員 今、提案者に聞きました点について法務大臣にも伺いたいと思うんですけれども、やはり、今提出者からも答弁がありましたように、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、韓国などでは、既に取り調べのときに弁護人の立ち会いが認められている。それに対して日本ではそうではないので、被疑者の権利が保障されていないと批判されているのではないか、その点と、今回の日米地位協定の見直しのこととどうお考えなのか、その二つ、お答えいただきたいと思います。
○野沢国務大臣 まず、弁護人の立ち会いの件の方を私の方から申し上げますが、各国の状況につきましては、それぞれの捜査のあり方そのものが基本的に、構造的にも違うことがございますので、我が国の立場については今御説明を申し上げたいと思いますが、我が国のルールでは、被疑者につきましても、弁護人選任権、それから弁護人の接見交通権が保障されている上に、被疑者の取り調べにつきましては、まず供述拒否の告知義務、拒否権ですね、拒否権の告知義務、それから供述調書の作成手続等が法令で規定されておりまして、同意を求めるということもあります。
これらの規定は一般に遵守されているものと考えておりまして、また、任意にされたものではない疑いのある自白は証拠とすることができないこととされまして、公判廷において供述の任意性、信用性が争われれば、検察官においてその存在を立証する責任を負っているということ。その存否の判断は裁判所にゆだねられているということでございます。
このように、取り調べにおける被疑者の権利保障は、既に十分になされているものと考えておりますので、議員御指摘のような批判は妥当ではないと考えております。
なお、日米関係につきましては、事務局からお願いします。
○樋渡政府参考人 御指摘の日米合同委員会の合意は、いわゆる平成七年合意の対象事件におきまして、被疑者の身柄が我が国に移転することに伴って米軍当局の捜査に制約が生じることにかんがみ、捜査協力を強化するための措置として、日本の捜査当局が行う取り調べに、捜査権限を有する米軍司令部の代表者が同席することを認めたものでございます。
合意のための協議におきまして、米国側が日本の刑事司法制度に対する不信やこれを非難する意図を有していないことが確認されております上、合意の表題にもありますとおり、今回の合意は、日本の捜査当局と米軍当局との間の捜査協力を強化するとともに、平成七年合意の円滑な運用を促進することを目的としたものでございまして、何ら米軍人等被疑者の権利にかかわるものではございません。したがいまして、米国側は、我が国の取り調べ制度に懸念を持っているから今回の合意に至ったという御指摘は当たらないと思っております。
○小宮山(洋)委員 今御説明のとおりとは私どもは余り認識をしておりませんで、捜査権限を有する者ということですが、先日外務省から説明を受けたときにも、軍司令部の代表者というのは、多くの人は弁護士の資格も持っているというようなお答えもございましたので、私どもは、今までのやりとりからしても、日本での捜査で被疑者の権利がやはり保障されていないという懸念から生まれたということがあるのではないかと思っております。
提案者に伺いたいんですけれども、今大臣は、今の仕組みの中で十分に権利が保障されていると言われましたが、そうではないから提案をしているわけですよね。特に今回、裁判員制度という、素人の方がする際に、やはり今度の裁判員制度の導入などの司法改革の中で今までの捜査のあり方を変えていきたいという思いがあるのかと思いますが、重ねてお答えください。
○辻議員 二〇〇四年四月の日米合同委員会の合意というのが外務省の方から配られております。これは、米側が日本の刑事司法制度に対する不信やこれを批判する意図を有していない旨を言明したということが、わざわざ言われております。
これは、今までの経過から考えて、アメリカ側が刑事被疑者の弁護人の立ち会い権を強く求めていたということが明らかなわけでありますから、ある意味で、日本の法務当局や外務省の立場をおもんぱかった妥協の産物として、このようなわざわざ米側の言明を求めて、しかし第三者の立ち会いはやっぱり認めざるを得ないという事実、現実があるわけですね。
その立ち会う方は、これは外務省の人に説明したんですけれども、じゃ、捜査に協力するということで捜査を行うのかというと、発言はしないと言っているわけですね。事実上、弁護士の資格を持った第三者が立ち会っているわけですから、これはその存在自体の持っている効果としては、弁護人的な意味において、第三者としてその場にいるということが制度として認められたものであるというふうに理解せざるを得ません。まさに、国際的に、日本の取り調べという制度が弁護人の立ち会い権を抜きにしているということが、やはり大きく、ある意味では国際的な常識からずれているということの端的なあらわれであろうというふうに思います。
今般、裁判員制度の導入をめぐっていろいろこの委員会でも論議があり、審議がなされているわけでありますけれども、裁判員制度を仮に導入して運用を円滑にしていくとすれば、やはり捜査過程が透明化していかなきゃいけないし、いろんな冤罪の温床になるようなシステムを変えていかなければいけない。そういう意味で、裁判員制度と、取り調べの可視化や取り調べにおける弁護人の立ち会い権というのは、やはり不可分一体の要請がある制度なんだ、このように考えております。
○小宮山(洋)委員 やはり政府の方は違う解釈をされていますけれども、被疑者のそうした権利をアメリカの場合にだけ認めるというのは、やはりこれは格差になるわけですから、少なくとも、今度の司法制度改革の中でしっかりと被疑者の権利を保障したいということが今回の立法の趣旨にあるのだと思います。
次に、中身をもう少し伺いたいんですけれども、身柄拘束中に限らずに、すべての被疑者の取り調べについて弁護人の立ち会い権を認めるとしたのはどういう理由からでしょうか。
○辻議員 現に令状が発せられて身柄が拘束されて取り調べが始まるということが通常だと思われていると思いますが、しかし、もっと多く、事実上任意出頭を求めてそれで取り調べをして、任意出頭を何日か繰り返して、そのあげくに令状をとって逮捕する、身柄の拘束に至るというのが今の捜査の常道であります。
そういう意味におきまして、任意出頭時における取り調べということの持つ危険性というのは、身柄拘束後の取り調べの危険性とそれは同一である、危険性という意味においては同一であります。そういう意味で、身柄拘束時だけではなくて、身柄拘束以前の任意の取り調べ段階でも弁護人の立ち会い権を保障する必要性がある、このように考えております。
○小宮山(洋)委員 捜査当局が弁護人の立ち会いに反対する理由というのは、本当のところはどういうところにあるとお考えでしょうか。時間が少しございますので、少しゆっくり御説明いただいていいと思います。
○辻議員 これは、二月二十五日の法務委員会の一般質問で私が質問したときに、あのときも刑事局長がお答えになったことだと思いますけれども、真実をしゃべらなくなるんだ。弁護人が立ち会ったり捜査を可視化すれば、被疑者が真実をしゃべらなくなる。非常に、そうすると実体的真実を明らかにすることが今の日本の捜査の中でできにくくなるじゃないか。アメリカとかとは捜査の仕組み、制度の仕組みが違うんだから、日本は日本の独自の仕組みの中で実体的真実を発見していく必要がある。そういう意味で、取り調べの重要性があるんだ。
それは、実体的真実の発見だけではなくて、また、本人が悔悟したり、そして被疑者に対して謝罪をしたり、そのことが被害者の側の被害感情を慰撫することにもなる、それがまた被疑者、被告人の更生の道にもつながるんだ。そういう非常にある意味で日本的な、それまで明治以降行われてきた捜査の状況を踏まえて、そのような説明がなされております。
そういう意味で、実体的真実の発見ということができなくなる、これが、弁護人が立ち会いすることによって支障が生じて困る、今の捜査のやり方が困る、この点に本当の理由があると思います。
しかし、これは、戦後の日本の刑事裁判において、一方で実体的真実の発見ということが必要でありますが、他方で被疑者、被告人の人権がきっちりと保障されなければならない、守られなければならない。被疑者、被告人の人権を侵害して実体的真実を発見するというのは、これは政策として間違っている、このように多くの学者も、また心ある方々は言っております。
憲法の要請は、まさにそういう要請であると思います。これは刑事訴訟の教科書に書いてあります、よく言われることでありますが、百人の真犯人を逃しても一人の無辜を処罰することなかれというのが刑事裁判の原則であります。実体的真実の発見よりもデュープロセスと人権擁護がより尊重されなければならない、そのような社会、そのような仕組みをつくっていかなければいけない、それがまさに二十一世紀の日本の刑事裁判のあり方の進むべき方向であろう、このように考えます。
○小宮山(洋)委員 今民主党が提案しているように弁護人の立ち会いが認められることになると、それによって取り調べのあり方は本当に変わるのでしょうか。どのように変わるでしょうか。
○辻議員 私は、弁護人の立ち会いが認められることによって、取り調べのあり方がかえってよくなるんじゃないかなというふうに思います。
捜査官の方々も、無理な自白偏重をしなくてもいい。俗に、一般には、取り調べに当たっては、警察の場合では、二人がその場に立ち会って、直接発問する捜査官と、そして横に同席する捜査官がいて、いろいろとあめとむちで被疑者の気持ちを、いろいろ、自白なり捜査官の側の言う真実を語らせる方向で、そういう意味では心理的にいろいろなノウハウを駆使して被疑者の供述を引き出すということになっております。今の自白偏重主義の捜査の構造の中で、捜査官もやむを得ずそうせざるを得ない。そうでなければ、やはりみずからの能力を問われるであろうし、成績も上がらないということになるわけです。
やはり、そういうことで、勢いが余って机をたたいたり、おどしをしたり、また私は弁護士でありますから弁護人としていろいろ体験しましたけれども、目の前に指を突き刺して目つぶしをする格好をしたり、一人が後ろから回って、わっと後ろからおどしつけたり、そういうような捜査が行われております。これはもう、凶悪犯人だと言われている人たちだけに対してではなくて、本当に一般市民に対してもそうでありますし、地位や名誉があると言われる方に対しても、やはり捜査の状況、密室の捜査の状況というのはそういうものであります。
やはり制度的にきちっと、そのように密室の中において捜査官が自白偏重をみずからの任務とされていれば、おのずといろんな不当な圧力を加えたりということが起こってくるわけでありますから、それが冤罪の温床に必然的になっていくわけでありますから、それを制度としてそういうことを正す、なくする制度をきちっとつくることが取り調べの適正化につながるでありましょうし、また実体的真実の発見のためにもこれはいろいろ論議をしなければいけないところでありますけれども、自白を求めることだけが実体的真実の発見につながるわけではありませんから、むしろそれが逆の意味を持つことがあるわけでありますから、むしろ捜査を適正化し、ひいては捜査官の資質や能力の向上にもつながるし、ひいては実体的真実の発見にもつながっていく。そういう意味において、弁護人の立ち会いを認めることは、むしろいろんな意味において捜査をいい方向に変えていく力になる、このように考えます。
○小宮山(洋)委員 被疑者の取り調べというのは、被疑者から話を聞いてその内容を調書にまとめる、そういう性格のものなので、公判での攻撃と防御というような対立構造ではないから、弁護人の立ち会いは認める必要はないという意見もあると思うんですが、その点はどうでしょうか。
○辻議員 戦後の刑事訴訟法は、不十分ではありますが、公判段階では当事者対等ということが一応原則として言われております。被告人の側、被告人、弁護人の側にも対等の武器を持たせなければいけない。一方で、検察官側の攻撃と被告人側の反証、防御ということを、対抗関係で、できるだけ対等に当事者主義的な訴訟構造を実現しようという思想、理念に基づいて、制度としてもそれに近いものがつくり出されているわけであります。
しかし、一方で、捜査は対等な当事者構造になっていない。あくまでも被疑者は調べられる側、つまり、糾問主義と言われますけれども、問いただされる、ただされる側に被疑者は立っているわけであります。
しかし、これは歴史の流れ、そして世界の刑事捜査の流れからするとやっぱり逆行しているし、日本がそこにいつまでもとどまっていてはならない。対立構造ではないというのは、ある歴史的段階の特殊な構造であって、目指すべき普遍的な方向というのは、捜査も対等でなければいけない、捜査も当事者主義的な権利がきちっと保障されなければいけない。そういう意味におきまして、現在の刑事司法のあり方、捜査を変えていく方向というのは、やはり弁護人の立ち会いを認めることである、このように思います。
○小宮山(洋)委員 仮に弁護人の立ち会いがないまま取り調べが行われた場合、その法的効力については、この法案の提出者としてはどのように考えますか。
○辻議員 お答えいたしますが、法案の三百十九条一項におきまして、現行法は、「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」は「これを証拠とすることができない。」ということで、証拠を排除する原則を掲げておりますが、私どもの提案しているこの立法では、弁護人の立ち会い権や、また可視化の「規定に違反してなされた取調べにおいてされた自白」は「その他任意にされたものでない疑いのある自白」とともに、「証拠とすることができない。」、証拠能力を排除するということになっております。裁判で証拠とすることができないということがうたってあります。
○小宮山(洋)委員 今、民主党提出の法案につきまして、弁護人の立ち会いについていろいろ提出者の考え方を聞きましたが、次に、取り調べの録音、録画について何点か聞きたいと思います。
取り調べの全過程を録音、録画することとしたのはどのような趣旨からでしょうか。
○中村(哲)議員 取り調べの録画、録音について担当しております中村です。
我が国の刑事裁判は、取り調べによって策定された被疑者の自白調書に大きく依存しています。しかし、その作成過程が本当に正しかったのかどうか、客観的な証拠によって検証することはできません。それはどういうことを生んでいるのか。その結果、検察官また捜査官の不当な取り調べを誘発しているのではないか、また、虚偽の自白による冤罪を生じさせてしまっているんじゃないか、そういった可能性が否定できないわけです。
そういったことでは、結局、現状では、自白調書がきちんと任意にされているものなのか、信用性があるのかということが問題になるわけです。自白調書の任意性や信用性をめぐっては、長時間に及ぶ証人調べが行われてしまっています。結局、取り調べをして調書をつくったとしても、それが裁判で有効に活用できていない可能性があるということですね。
昨年施行された、平成十五年法律第百七号の裁判の迅速化に関する法律というのがあります。その第一条には、目的としてこのようなことが書かれております。「公正かつ適正で充実した手続の下で裁判が迅速に行われること」、このように目的が掲げられております。こういうことを達成するためには、自白調書の任意性や信用性、これについての証拠調べを迅速に行うための制度が不可欠であります。
つまり、録画や録音ということができれば、調書が本当にそうなっているのかどうかは、確実に後で振り返ってちゃんと証明することができるようになるわけですね。そういうことも考えれば、こういった制度は非常に不可欠、そのために有効なのではないかということでございます。
さらに、今国会に提出されている裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、いわゆる裁判員法案ですけれども、その五十一条においてこのようなことが書かれております。「裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。」ということでございます。そういうことであれば、自白の任意性、信用性については、証拠調べをより明瞭に行うための制度が必要になってきます。
先ほど申し上げましたように、この録画、録音というものがこういった目的に資することは明白であります。このため、本改正案では、取り調べの全過程を録画、録音する制度を創設し、適切な取り調べを担保して被疑者の権利を擁護するとともに、公判における自白調書の任意性、信用性をめぐる証拠調べの迅速化ないし明瞭化を図ることとしております。
○小宮山(洋)委員 取り調べの全過程を録音、録画することになりますと、取り調べでの供述の状況がそのまま公判手続に利用されることになります。そうなりますと、被疑者が、例えばお礼参りされることを恐れるなどで、心理的に萎縮して真実を供述しなくなるのではないかという心配の声もありますけれども、この点については提出者はどう考えますか。
○中村(哲)議員 確かにそういった考え方はあるのかもしれません。しかし、密室でしか真実が話されないという見解は、直接主義、伝聞法則のもとでの公判中心主義、すなわち、近代国家における裁判制度を否定する考え方だと私は思います。録音、録画がされていても、取り調べ官と被疑者の密室でのやりとり自体が変質するわけではありません。つまり、テープやビデオを意識するかどうか、それだけの違いであります。このことについてはかなりもう実証されているところがあります。
本改正案が実現すれば、録音、録画は常にされることになりますから、いずれも、だれもがその存在になれることになります。テープやビデオの存在も意識しなくなる。そうすれば、結局、密室でしか真実は話されない、そういう考え方をされている人の懸念もなくなるわけですね。
現実に、イギリスにおいては、その経験から、取り調べ官も被疑者も、テープやビデオの存在を意識しなくなっているという報告がなされております。また、実証もなされております。また、現時点でのテープや録画の水準、ビデオの水準からすれば、被疑者にテープが回っていることやビデオテープが回っていること、そういうことを意識させないような、そういうやり方ができます。そういうことで、余り懸念される材料はないんじゃないかと思っております。
また、録音、録画されていると真実を話したがらないという議論は、逆に、録音、録画をぜひ行ってほしいという被疑者側の要求を拒否する理由にはならないということも明白であります。むしろ、取り調べ過程がそのまま保存されることによって、その過程に作為や加工が入り込む可能性は封殺されます。その意味で、虚偽が混入する危険性は低められることは明白であります。
取り調べの状況がありのままに明確にされて、その真相が示される、それは事実そのものの真実解明にも資することになります。そういった意味では、密室でしか真実は話されていないということは当たらないと思います。
○小宮山(洋)委員 取り調べの全過程の録音、録画ということが関係者のプライバシーとは抵触しないんでしょうか。
○中村(哲)議員 関係者のプライバシーという場合に、二つのプライバシーがあると思います。それはまず、被疑者自身のプライバシーです。もう一つは、被疑者以外の者のプライバシーです。これを分けて説明させていただきたいと思います。
まず、被疑者自身のプライバシーについては、現行法上も、被疑者の供述は供述調書に録取されています。そして、被疑者はこのことを認識した上で供述や自白をしております。また、本改正案では、被疑者からの申し立てにより、取り調べ状況等の録画については行わなくてもよいことにしております。つまり、画像、動いている絵は撮らなくてもいいということにするわけですね。その場合は録音のみになるということです。そうしたやり方で、被疑者のプライバシーにも一定の配慮をしているということは言えると思います。
次に、被疑者以外の者のプライバシーについてです。被疑者の供述を通じて間接的に被疑者以外の第三者のプライバシーが明らかにされるということは確かにあり得ます。しかしそれは、程度の差こそありますけれども、供述調書の録取でも同様です。だから、このことのみを理由にして取り調べの可視化を図るために最も有効である録音や録画を禁じるのは、本末転倒の議論であると私どもは考えております。
○小宮山(洋)委員 法務大臣に伺いたいと思います。
政府としては、取り調べの録音、録画、これになぜ反対をされているんでしょうか。
○野沢国務大臣 裁判員制度の導入に伴いまして、裁判員にわかりやすく迅速な審理が行われるようにすることは極めて重要であると考えております。
しかしながら、取り調べ状況の録音、録画等については、司法制度改革審議会意見においても、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であることなどの理由から、将来的な検討課題とされているところでありまして、慎重かつ十分な検討が必要であると考えております。
なお、最高裁判所、日本弁護士連合会及び法務省、最高検察庁は、本年三月、裁判員制度の導入等を踏まえまして、検討を要する刑事手続のあり方等に関し協議、検討を行うために、刑事手続の在り方等に関する協議会を設けたところでございます。この協議会におきまして、委員御指摘の取り調べ状況の録音、録画等の問題についても協議、検討することとされておりまして、法務省としては、同協議会における議論も踏まえ、刑事手続のあり方全体の中で多角的な見地から検討することが必要であると考えております。
○小宮山(洋)委員 なぜ慎重にとおっしゃるのか、いまいちそこの理由がよくわからなかったんですが、協議会で検討されるのは結構ですけれども、これは裁判員制度が実施されるまでには、当然、その協議会の結果も受けて、五年もたてば相当、五年たつかどうかはまだ、今後の審議でどういう法案になるかわかりませんけれども、幾ら慎重にとおっしゃっても、やはり裁判員制度が実現するときにはそういうことは実施できると考えてよろしいでしょうか。
○樋渡政府参考人 ただいま大臣がおっしゃいました協議会をこの間発足させたことでございまして、その結論を先取りして今申し上げることもできないんでありますけれども、今後の進め方も検討しておりまして、要するに、この一年間で何とかその結論が、といいますのは、この問題だけでは、この問題の結論という意味ではなしに、裁判員制度の運用に当たりましての、運用のあり方とかいろいろな問題点がございますので、一年後に何らかの結論が出るように努力しようというふうには話し合っておりますが、これから話し合っていくということ以外に、今お答えのしようがないところでございます。
○小宮山(洋)委員 今回の民主党の提案は、この機会にとにかく捜査のあり方とか司法制度を変えようと思ってやっているわけですので、いろいろな理由があると思いますけれども、なるべく積極的にそこを検討していくように、私たちも努力をしたいと思いますけれども、皆様方にもぜひお願いをしたいと思います。
それで、提出者への質問に戻りますが、ビデオテープ、録音テープといった記録媒体の複製交付請求権を起訴前の段階のみ認めるということにしたのはどういう趣旨からなんでしょうか。
○中村(哲)議員 まず、起訴前における記録媒体の複製交付請求を認めることによって、被疑者または弁護人が違法、不当な取り調べ等が実施されていないかを早期に検証することが可能となります。被疑者を違法、不当な取り調べ等から守るということがこれによって可能となるわけでございます。
また、仮に違法、不当な取り調べ及び弁解録取手続が実施されていた場合には、捜査機関に対してその違法、不当性を主張して不起訴処分に持ち込む、そういった努力が可能となります。つまり、起訴前弁護活動に資することになります。さらに、被疑者または弁護人が起訴前の段階で自白の内容について確認することができるようになります。そのために、来るべき公判に備えることにも資することになります。以上が起訴前における交付請求を認めることにした理由です。
なお、起訴後についてどうなんだという考え方があると思います。本改正案では、第百九十八条第九項、第二百三条第四項等におきまして、取り調べ及び弁解録取手続の全過程を記録媒体に記録するように義務づけておりまして、自白調書の任意性について立証責任を負う検察官は、記録媒体を証拠として公判に提出せざるを得ません。
したがって、二百九十九条第一項により、起訴後において、被告人または弁護人は、公判提出予定の証拠の事前開示の一環として、あらかじめ記録媒体の内容を確認することが可能です。そのために、別途、複製交付請求権等の規定は設けないことといたしました。
○小宮山(洋)委員 起訴前の段階で記録媒体の複製交付請求を認めますと、被疑者の供述内容が外部に流出をして、証拠を隠す、共犯者と口裏を合わせるといった罪証隠滅のおそれはないんでしょうか。また、被疑者以外の人のプライバシー保護の観点からは問題がないんでしょうか。
○中村(哲)議員 まず、罪証隠滅のおそれについて言えば、被疑者が身柄を拘束されている場合については、そのようなおそれは認められないと思います。一方、身柄を拘束されていない被疑者については、取り調べの際の供述内容を共犯者に話すことなどで罪証を隠滅することは現在の法律でも可能です。だから、記録媒体の複製交付請求を認めたからといって、直ちに罪証隠滅のおそれが高まるものとは言えないのではないかと考えます。また、このような罪証隠滅のおそれが相当程度に高まれば、身柄拘束がなされます。
いずれにしても、罪証隠滅のおそれを理由に、適正な裁判実現のためには不可欠なこのような複製交付請求権を制限するというのは適当でない、そのように考えております。
次に、プライバシーの侵害のおそれについて申し上げます。
今回、複製交付請求権が認められる記録媒体は、被疑者本人の供述状況が記録されているにすぎません。ビデオリンク方式により記録された記録媒体のように、第三者である証人の証言状況が記録されているものに比較すれば、被疑者以外の者のプライバシー侵害の程度はさほど大きくありません。よって、このことのみを理由に複製交付請求権を制限するのは適当でないと考えます。
○小宮山(洋)委員 仮に、取り調べの録音、録画の手続が守られずに取り調べが行われた場合、その法的効力はどうなるんでしょうか。
○山花議員 本改正法に定める録画、録音手続を遵守せずに取り調べがなされた場合、この取り調べにおいてなされた自白は、直ちに、任意になされたものではない疑いのある自白に該当することになります。したがって、刑事訴訟法三百十九条第一項の規定によって、証拠とすることができない。つまり、自白の排除法則が働くということになります。したがって、もし録画、録音手続を遵守せずになされた調書等が提出をされましても、それを除いて裁判官は心証を形成するということになります。これによって、取り調べの際の録画、録音手続というものが担保されると理解をいたしております。
なお、先ほど来、そのような手法をとりますと取り調べにいろいろ不都合が生じるのではないかという御懸念を、表明なのか、あるいは確認なのか、されておりますけれども、我が国の優秀な検察官をもってすれば、イギリスやあるいはほかの国でできていることですから、そういったことは起きないと考えております。
○小宮山(洋)委員 私が懸念を持っているというよりは、そういう意見もあるということで、見解を伺わせていただきました。
逮捕されて、犯罪事実が間違いないかを調べるため、取り調べ前に行われる弁解録取手続、これについても、取り調べと同様に、弁護人の立ち会い権や手続の録音、録画の制度を設けることにしたのはどういう趣旨からなんでしょうか。
○山花議員 弁解録取手続においては、被疑者に弁解の機会というものが与えられ、弁解録取書というものが作成をされております。この弁解録取書は、刑事訴訟法三百二十二条第一項の「被告人の供述を録取した書面」に当たりまして、公判において証拠とすることができることとされております。また、現状においては、弁解録取手続を終えた後には、引き続いて取り調べ手続に切りかえられることが多くなっておりますので、被疑者において弁解録取手続と取り調べ手続、この二つを明確に区別することは困難ではなかろうか、このように考えられます。
このため、本改正案では、取り調べと同様の観点から、弁解録取手続においても弁護人の立ち会い権を創設し、適正な弁解録取の機会、これを担保いたしますとともに、公判における自白の任意性あるいは信用性、これをめぐる証拠調べの迅速化、明瞭化を図るため、録音、録画制度を設ける、このようにしたものであります。
○小宮山(洋)委員 それでは次に、保釈の制限事由関連で伺いたいと思います。
保釈の権利について伺いたいと思うんですが、権利保釈をどう考えているのか。現行の刑事訴訟法第八十九条に、保釈を許されない場合が一号から六号まであるわけですけれども、それ以外は保釈される権利があると考えてよろしいんでしょうか。
○山花議員 この権利保釈という制度、何が原則かというふうに考えるべきではないかと思います。
一般に、我が国では、何か報道を見ておりますと、逮捕されるとそれで事件は一件落着というような報道ぶりも目につくわけでありますけれども、そうではなくて、それが被疑者となり、また被告人という地位になってまいります。
御案内のように、被疑者が起訴をされますと、晴れて被告人という地位を取得いたします。被告人になりますと、国選弁護権が認められたりであるとかもろもろの手続的な保護がされておりますが、それはあくまでも被告人というものは、最終的に裁判官が、合理的な疑いを超える程度の立証があって初めて有罪判決があって初めて有罪となるのだということであって、それ以前はあくまでも無罪が推定をされております。したがって、被告人にそういった無罪の推定が働いている以上、勾留というのはむしろ例外的な処分であると考えるべきではないか。
また、被告人は訴訟の当事者として十分な防御の機会というものを保障されなければなりません。一方では、捜査当局は大変国家的な権力としていろいろな捜査のために手段を持っておりますけれども、一般に被告人の方は、自分のいわゆるアリバイであるとかそういったものを、必ずしも立証という言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、少なくとも合理的な疑いを抱かせる程度に集めなければ事実上いけないわけですけれども、そのためのやはり機会というものが十分に保障される必要があるわけであります。
したがって、保釈というのは、原則としては請求をすれば許される、このように考えるべきではないでしょうか。このことは、刑事訴訟法の第八十九条が「保釈の請求があつたときは、左の場合を除いては、これを許さなければならない。」と規定している。つまり、原則は保釈の請求があれば認める、今御指摘のケースに限ってはそれは認めない、こういう構造であるという点にもあらわれていると考えられます。
○小宮山(洋)委員 政府側に伺いたいと思います。
現行の刑事訴訟法第九十六条にある保釈を取り消すことができる事由とされております「被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」というこの事由によって保釈が制限された件数のうち、自白した場合と否認した場合に分けてデータを示してほしいと思うんです。といいますのは、先ほど名古屋刑務所のことで提出者からもありましたように、やはり、自白をすれば保釈をされるけれども、否認した場合はずっととめ置かれるという傾向があるのではないかという意見もございますので。
○大野最高裁判所長官代理者 議員がお求めになっております項目、要するに、保釈請求却下決定について刑事訴訟法の八十九条の保釈制限事由である何号に当たるかということにつきましては、昔からこれは統計をとっておりません。
ただ、自白事件と否認事件の保釈率ということでは出てまいりますので、それを申し上げますと、平成十四年の通常第一審、これは地裁と簡裁のいわゆる公判請求があった事件ということですけれども、その終局人員、ですから判決に至った人員の中で否認事件の保釈率、これは勾留されていた人員のうちで保釈された人員の割合、ですから勾留で身柄が拘束されていた者のうち保釈された者がどの程度いるかということですけれども、否認事件につきましては一一・七%、自白事件につきましては一二・五%ということでありまして、否認事件の方が自白事件よりはわずかに低いというふうに言えると思います。
○小宮山(洋)委員 まあ、データはとっていなくて、たまたまというか、この年の場合はこうだということなので、私が求めました基本的なデータではないのかなというふうに思いますが、これ以外には全般的なものはとっていないということでしょうか。
○大野最高裁判所長官代理者 今申し上げました、何号に、八十九条のうちに先ほどお話ありましたように一号から六号まで保釈の制限事由というのが法律で定められているわけですが、その何号によって保釈が認められなかったのか、保釈請求が却下されたのかということについての統計はとれておらないんです。
ただ、自白事件であったのか否認事件であったのかということについては統計がありますので、今申し上げました十四年ですけれども、例えば平成十一年であれば自白事件では一三・六%が、否認事件では一二・九%が保釈になっている、そういった数字は逐年出ることになります。
○小宮山(洋)委員 そのデータからするとそれほど差はないということのようですけれども、できれば、やはりきちんとこうしたデータも全体としてとっていただけた方がいいのではないかというふうに思います。
法務大臣に伺います。権利としてあるはずの保釈がなかなか認められない、人質司法などという余りありがたくない言い方もあると思いますけれども、この実態をどういうふうに大臣はお考えになっていますか。
○野沢国務大臣 現行の勾留制度は、被疑者、被告人の身柄を拘束することによりまして、その逃亡及び罪証隠滅を防止しようとするものであるところでございます。
刑事訴訟法では、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合など保釈制限事由がある場合を除いて、保釈を許さなければならないこととしておるわけでございます。保釈制限事由がある場合であっても、裁判所が適当と認めるときは保釈を許すことができるとしておりまして、現状以上に保釈要件を緩和することは適当ではないと考えております。
○小宮山(洋)委員 そうせねばならないとされていることがそうでないから、こういう法案が提出されているのだと思いますけれども。
民主党の法案で、保釈を制限することができる事由を「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」から「充分な理由」に改めたのは、どういうような趣旨からなんでしょうか。
○山花議員 現行の刑事訴訟法八十九条の第四号において、保釈事由として、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」となっておりまして、その該当性を広く認めております。つまり、この事由に当たる枠が大きくなっている分、保釈が容易には認められないという問題が生じているわけで、これは昭和三十三年までは「充分な理由」というふうになっておりましたけれども、それが「相当な理由」というふうに広げられているわけであります。
地方裁判所で勾留人員との対比でということで、手元にあります話でいいますと、今、私も一一・七とか一二・五という保釈率、大変低いのでびっくりしていたんですが、かつて、一九五三年当時四五・〇%、一九六三年四〇・七%、一九七三年五八・〇%、一九八三年三一・九%ということで、かつてに比べると驚くほど低くなっているのだなと思っておりました。
実は、先日も、これは有名な事件ですけれども、東京地裁であった事件で、これは無罪判決が出た刑事事件で、余り特定のことを申し上げるのもいかがなものかと思いながら、しかし、たしか十三年―十五年で求刑されていた事件なんですが、十五年六月勾留をされていたという事案がございます。先ほど河村委員の方から、一年以上もやっているのはいかがなものかという話がありましたけれども、一年などというのはまだ序の口で、十五年勾留されている。また、あるいはこの共犯者であるとされて、まだ審理中ですが、その被告人も十二年間まだ勾留をされ続けているというものがございます。
先ほど、否認事件と自白事件とでそうは違いはないという答弁がございましたけれども、それはあくまでもかなり低い保釈率の中でそうは違いはないわけでありまして、やはりこうしたことがむしろ有形無形の圧迫となり、また、もうこれも有名な話かもしれませんけれども、拘置所等、行刑施設内に長期間入れられておりますと、拘禁症を発症する者なども多数出ております。
したがって、そういった人道的な見地からも、本改正案においては権利保釈の除外事由というものを制限いたしまして、「相当な理由」から「充分な理由」、このように改めた次第でございます。
○辻議員 大野局長の方から、自白事件と否認事件で余り保釈率に変わりはないというような数字が出ておりますが、これは、現場にいる者の実感としては全く違います。
私なんか素朴に、やはり時代がどんどんたって、世の中がどんどん自由に、そして民主主義的になっていくものかなというふうに、非常に楽観的に考えておりましたけれども、私は弁護士を二十三年間やってまいりましたけれども、保釈の運用というのは逆行している。どんどんどんどん、ある意味では身柄の拘束がされる率が多くなるというか、保釈が認められにくくなっていくということを非常に実感しております。
例えば、起訴後に保釈される割合が非常に減っている。起訴後、第一回の裁判が開かれるのは大体一カ月とか一カ月半でありますけれども、その一カ月か一カ月半の間、否認していない自白事件であっても、なかなか保釈が認められないという例があります。起訴後直ちに保釈されるというのは、本当に自白をしていて、かつある特定の罪種にどうも限られるんじゃないか。道路交通法違反でそんなに大きな被害が生じていない場合とか、かなり限られている。それは、この十年、十五年、やはり保釈率がどんどん悪くなっているというふうな実感がありますし、第一回が開かれても、否認しているとなかなか保釈されない。
これは、先ほど自白事件は一二・五%の保釈率であり、否認事件は一一・七%だとおっしゃられましたけれども、どのような事案、どのような根拠でこの統計の数字が出ているのか、極めて疑問であります。
いろいろ裁判実務に関与している多くの人々からいろいろなアンケート調査をしたりしている統計表も出ておりますし、やはりこれは、法務省なり裁判所なり、きちんと調べて、本当に責任を持った回答をしていただきたい。人質司法ということが今の捜査をゆがめているし、裁判のあり方もゆがめているんです。
本当は争いたくても身柄が出ない、否認し続けたらもう半年ぐらい出ない、外に出ることができない。やむを得ず調書を全部認めて、裁判も争わないで、早期に、公判廷で認めて保釈してもらおうというふうに思う場合が結構多いですし、捜査の段階でも、いつまでも否認しているとずっと出られないぞと言われて結局自白してしまう。本当にそうだと思っていなくても、事実が事実どおりではなくても、軽微な事件だから早く出られた方がいいとかいろんなことを言われて、自白調書をとられてしまう。
ですから、捜査の段階における弁護人の立ち会い権とか捜査の可視化によって取り調べの自白偏重主義を正さなければいけないという要請は、一方で、保釈をしっかりと権利として認めるということをきちっと制度として確立することによって、一体となって前進するということが言えるというふうに思います。
民主党の今回の八十九条の案は、従来の「相当な理由があるとき。」というのを「充分な理由があるとき。」に改める。これは、昭和二十八年にこの刑事訴訟法八十九条の五号のいわゆるお礼参りの規定が、当初は「充分な理由」があるとき許すということになっていたのが、昭和三十三年に「相当な理由があるとき。」というふうに変えられている、そういう、強化されたという経過があります。
やはり法文も保釈を限定する方向に流れてきているということについては、今やはり流れを変えるときであろう、それが憲法の趣旨にも合致するし、日本の刑事裁判を本当によりよいものにしていくことであろうというふうに思います。そういう意味で、保釈制度を改善する必要がどうしてもあるということで、この法案を提案しております。
以上でございます。
○小宮山(洋)委員 民主党提出の刑事訴訟法改正案につきまして、弁護士の立ち会い、取り調べの録音、録画、保釈の制限事由についていろいろな論点を伺ってまいりましたが、最後に提出者に、今回この民主党から出されている法案は、開かれた裁判を目的とする裁判員制度を初め、今回の司法制度改革の中でその改革の成否を左右する重要なかぎだと私は考えるんですけれども、今回のこの法案にかけたその趣旨、思いをそれぞれ一言ずつ伺って、私の質問を終わりたいと思います。
○河村(た)議員 やはり人間は失敗があるので、検察も警察もあると思うんですね、やはり。だけれども、実際は公訴の取り消しの規定を持っているんだけれども、それはなかなかできない。やはりしかるべきシステムをつくらないと、これは自民党さんにも言わないかぬのだけれども、やはりこういう密室裁判を続けておいて、それで突然裁判員の前に毒を盛られたジュースばかり出して裁判員に判断しろという、こういうのは本当に自由主義の精神から外れるということでございますので、ぜひこれは、もうこれは決めぬと、世界の常識ですから恥ずかしいというのが私の思いでございます。
○山花議員 済みません、先ほど辻議員から御指摘いただきましたが、先ほど私、八十九条四号のところが昭和三十三年の改正でと申しましたが、五号の方でした。失礼いたしました。
当委員会でもたびたび問題にされておりました、例の死刑を言い渡されている袴田巌さんの事件なんですが、当時の記録を拝見いたしますと、捕まってから二十三日間、例えば八月十八日に逮捕されて、十九日、十時間三十分。二十日、九時間二十三分。翌二十一日、七時間〇五分。二十二日、十二時間十一分。二十三日、十二時間五十分。二十四日、十二時間七分。二十五日、十二時間二十五分。二十六日、十二時間二十六分。読み上げるのもあれなんですが、もうずうっと、最大で十六時間二十分取り調べが続いていたということが記録として残っております。
袴田巌さんは、その手紙の中で
「殺しても病気で死んだと報告すればそれまでだ」と言っておどし、罵声をあびせ棍棒でなぐった。そして、連日二人一組になり三人一組のときもあった。午前、午後、晩から十一時、引き続いて午前二時頃まで交替で蹴ったり、殴った。それが取り調べであった。目的は、殺人・放火等犯罪行為をなしていないのにもかかわらず、なしたという調書をデッチ上げるためだ。九月上旬であった。私は意識を失って卒倒し、意識をとりもどすと、留置場の汗臭い布団の上であった。おかしなことに足の指先と手の指先が鋭利なもので突き刺されたような感じであった。取調官がピンで突いて意識を取り戻させようとしたものに違いない
というお手紙を書いていたりとか、これは随分昔の事件ですから、今はそういうことはないと信じたいですが、しかし、やはり密室の中ではそういうことが行われるリスクがあるわけであって、これから裁判員制度などを導入するに当たっては、そういった自白の任意性の有無ということについて、書面で見てああだこうだ言うのではなくて、やはりビデオ録画などで決着をつける、そういった形が望ましいと考えております。
○辻議員 やはり捜査の現場におられる方とか裁判の現場におられる方、今の制度の中で与えられた役割でいろいろ一生懸命頑張っておられる。だから、今の日本の刑事裁判の状況や日本の捜査の状況がこうだからやむを得ないというふうにお考えになるというのは、それはそれでよくわかるところであります。
しかし、現場がこうであるからということで、それだけに、やはり政治の責任というのはそれを追認するものであってはならないし、今こそやはり、五十年先の日本の刑事裁判、刑事システムがどうあるべきだという観点で考えたときに、世界の刑事裁判、刑事司法がどうなっているのか。必ずしもそれはグローバルスタンダードとかほかと一致しなければいけないということではありません。日本は日本の伝統的な独自のよさもあるとは思いますが、しかし、実体的真実発見とデュープロセスの保障という対立した利益が衝突する場合には、デュープロセスの保障、人権保障を優先するんだ、これがやはり五十年先の日本の刑事司法を考えたときの原理原則であります。
そこをきちっと考えて、今の現状に追随するんではなくて、現場の必要性に引きずられてそれを固定化して制度を考えるんではなくて、先を見通した制度を政治家の見識としてつくり出していきたい。民主党はそのような立場でこれを提案しておりますし、自民党の方々も、やはりそういう意味では、政治家の見識に立ってこれにぜひ賛成していただきたい、このように思います。
○小宮山(洋)委員 再三申し上げていますように、今回の百年に一度の司法制度改革、これがやはり取り調べのあり方など刑事司法を変えていくチャンスでもあると思うんですね。そうした意味からしましても、普通の国民が参加をする裁判員制度をよりよい形でやるためにも、いろいろな意味からいたしまして、この民主党の改正案の趣旨がしっかり理解されまして、考え方が取り入れられるよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
○柳本委員長 与謝野馨君。
○与謝野委員 民主党から刑訴法の改正案が出されましたけれども、何たる楽観主義、それから諸外国の制度に対する無理解ということを実は感じておりまして、恐らく民主党が政権をとった世の中では、犯罪者が謳歌するんではないかという懸念を持ったわけでございます。
そこで、辻提案者にお伺いしたいんですが、辻提案者の御質問をずっと三週間ほどお伺いしていますと、裁判員制度は絶対反対だというふうに私は聞こえてきたんですが、裁判員制度はやはり本質的によくないというふうに今でもお考えですか。
○辻議員 刑事被告人の諸権利がきちっと保障されることと、それから国民の意見を反映することが調和する制度というのはやはりあるというふうに考えております。それは、日本で戦前実現されていた陪審制度はどうなのかという問題もありますし、今、参審制の一つの形態として裁判員制度と言われておりますけれども、それをもう少し利害がそれぞれ調整できるような、煮詰める作業はあり得るんではないかというふうに私は思っておりますから、一概にオール・オア・ナッシングで賛成反対ということで言っているわけではありません。
○与謝野委員 冒頭、河村提案者から名古屋の刑務所事件が一つの契機になった、こういうお話があったんですが、何か名古屋の刑務所事件というのは、むしろ民主党がずっとあおっていて、最終段階になったら今度は冤罪だというふうに話が変わってきた。何か不思議な気がしてならないんですが、その辺は一体どういうことなんでしょうか。
○河村(た)議員 最終段階というわけではありませんけれども、それぞれ質問した人が立場が、立場がというか、違うと思うんだけれども、僕は去年の二月、三月でしたか、法務をやらせていただいて、三回は、何か法務省が言うことがみんな本当だと思いましたから、あのときは。それで、マスコミもそうだったんですけれども。そういうつもりで質問しまして、しかし、当事者にちゃんと聞いたら、全然事実が違っておるではないか。
それで驚きまして、私はこの法務委員会でも謝罪しましたし、それから予算委員会でも謝罪しまして、そのかわり、皆さんを助けるために、この八名の刑務官を助けるために私は全力を尽くすというふうになってきたわけなんで、本当に僕にとっては悲しい、五十五になりましたので、やはり冤罪に手をかすというのは人間の生き方の中で私は一番おぞましい生き方だと思っておりますので、個人的なこともありますけれども。
しかし、そういう調べがどんどん出てきて、それこそ今の与謝野先生に言いたいんですけれども、それこそ調べにちゃんと弁護士が立ち会っていたら、もしビデオがあったら、僕は絶対こんなことは起きなかったと思いますね。それから保釈もそうですね。
ですから、僕は失敗したことは自分ではっきり謝りますので。それからまた、委員会は、この間も言いましたけれども、こんな、延べ六十五人ですか、予算委員会は集中審議までしている。それから法務委員会は毎週水曜日やっていたんですから。これを呼び捨てにした人もかなりいますよ、刑務官を。
何の根拠もなかったということが許されるのか、本当に。強い憤りを感じて、ぜひここでもう一遍やってもらいたい、きちっと。真相解明は裁判所だけじゃないですから、当然。真相解明は再発防止の行政の責任でもありますし、国会の責任でもあります。ぜひやっていただきたいということで、そこにもっていって捜査の手法がやはりだめだと、これは。
密室で、おまえらやっただろうといって、こういうふうに決まっているじゃないか、この場で書け、そのまま留置場へ入れるぞとぼんぼんぼんぼん机をたたかれて、やって涙をこぼしてぶっ倒れた人もおりますけれども、そんな取り調べを許しておってはこういう悲劇が何回も繰り返される、そういう思いでこの立法につながっていったということでございます。
○与謝野委員 そこで、先ほどイギリスの制度を御説明になった中村さんがおられないので、ちょっとお伺いできないのでまた後ほどお伺いします。
刑事局長にお伺いしますが、世の中、犯罪が行われるときには必ずしも単独犯とは限らない。むしろ、組織犯罪などもあって、例えば麻薬の密売事件、実際は、捕まるのは現場の密売者。実際はその上に組織が幾つもあって、末端のそういう密売者を捕まえても、何とか組織の全容を解明したい、だれに指示を受けたのかと。
例えば暴力団でしたら、組員が何か犯罪を行った。それは組員の単独犯なのか、個人で計画をして犯罪を行ったのか、あるいは上部の者に指令を受けたのか、こういう全容を解明しなければならないときに、どうしても本人からきちんとした話を聞かなければならないという共犯関係、特に共犯関係、しっかりとした供述を得なければ事件の全容が解明できないというケースが多いと思うんですけれども、こういう可視化というようなことになりますと、自分が上の人間を売ったということになる、絶対自供しない、全容は解明できない、こういうことになるんですが、実際、そういう組織犯罪などを捜査されるとき、どういう苦労をされるのか、その点をお話しいただきたいと思います。
○樋渡政府参考人 我が国の捜査におきます取り調べというものの機能の役割は、非常に各国に比べて大きなものでございます。
委員御指摘のとおりの暴力団事犯等の組織犯罪等におきましても、首謀者の配下の構成員に対する指示、命令といいますのは、実際には当事者間において隠密になされることが多いことでありますため、構成員による犯罪の実行行為そのものについては客観的証拠がございましても、当該構成員に対する首謀者の指示、命令の有無やその状況等については、当該構成員の自白がなければおよそ明らかにならない場合も極めて多いものでございます。そのような意味で、犯罪を実行した配下の構成員等の自白は、組織や犯罪の実態を解明して首謀者を検挙しその責任を問うなど、事件の全容を解明するために極めて重要な役割を果たしているところでございます。
そして、取り調べ官は、最長二十三日間という身柄拘束期間内に、被疑者との信頼関係を築いた上で、被疑者が組織の報復を恐れ、他人を前にしては話すことができない暴力団事犯等における組長の関与等について、真実を語るように説得などをしながら極めて詳細な取り調べを行い、それによって得た供述に基づきまして、さらに客観的な証拠の収集や関係者の取り調べを行うなどの綿密な裏づけ捜査を行いまして、事犯の真相を解明しているという実情にあります。
このような人たちから真相を得る、特に、自分に命令したのはだれだというようなことを問いかけそして説得するためには、並々ならぬ努力をしながら、時には自分のこともしゃべりながら、そして相手の生い立ちにじっと耳を傾けながら、そういうような信頼関係のもとで、でもやはり世の中はよくするべきだろうというような感じで調べに当たっているのが実情でございます。
○与謝野委員 そういう複雑な事件について、共犯者を割り出さなきゃいけないというときに、民主党案で、弁護士が立ち会っている、もしかしたら親分から派遣された弁護士かもしれない。可視化があって録音、録画されているから、先ほどのお話だと取り調べの全過程が録音、録画されているということだから、例えば口を割ったら自分の家族が報復を受けるとかいろいろなことが予想される。
そういうときに、民主党の可視化法案だとほとんどの人が口を割らないということになると思うんですが、その点、先ほどのお話だと、それは優秀な検事が頑張れば大丈夫だという捜査手法、それからいろいろ、質問や何かのやり方をやれば大丈夫だなんという話だったんですけれども、そんなものではない、命がけの話になっちゃうんですが、その辺はどういうふうにお考えなんですか。
○山花議員 お答え申し上げます。
むしろ、私は、御質問の趣旨が、あるいは見解の相違なのかもしれないですが、少々理解しかねることがあるのですが。
と申しますのも、現行でも供述の録取等はすべてとっておりますし、刑事裁判は、証拠として出されるものについては憲法上公開することになっております。したがって、録画をしているか、あるいは現行のような書面の形にしているか、それによって御指摘のようなそんな大きな違いが起こるのかどうかということは、起こるという心配の方がむしろ私どもはよく理解ができないところでございます。
また、取り調べの場所に弁護士がいて、それが暴力団の、あるいは親分の関係だったらどうかという御指摘ですが、しかし、それはもう弁護士制度という制度そのものの問題なのではないでしょうか。つまりは、弁護士については守秘義務というものが課されておりますので、これをよそに行って明かしたりということについては、それは弁護士倫理に触れるということで、そういうことを行えば懲戒なりあるいは資格停止という処分まで今制度としてあるわけですから、その点も現行の制度の中で担保されていると考えております。
○与謝野委員 要するに、共犯者の名前は供述調書に書かれるから、結局はわかっちゃう、この人が白状したということがわかっちゃうという話を今されているんですが、自分が言わなかったことにしてくれれば真相は言う、実はこの組織犯罪は私とだれだれとだれだれがやりました、みんなに聞いてください、自分が最初言ったことにするというのはちょっと困るけれどもというようなケースも多分あると思うんですが、刑事局長、そういうケースはあるでしょうか。
○樋渡政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、暴力団事犯などの組織犯罪等におきましては、末端の構成員である被疑者が、取り調べにおいて、取り調べ官の説得に応じて組織の実態や首謀者からの指示の状況なども含めて供述する場合でも、組織による報復を恐れて供述調書に録取しないように頼んでくることもございます。
しかし、このような場合でありましても、その被疑者の供述内容をもとに他の証拠を収集することが可能となり、その結果、捜査を大きく進展させることができる場合もあるものと承知しておりますし、また、委員御指摘のとおり、今お話しするけれども調書の作成は待ってくれということを頼んでくることもございまして、そういう場合には、今申し上げたような、捜査を尽くして、その上で機を見て本人の承諾を得て、その後そのときに調書をとるということは間々あることだというふうに思っております。
○与謝野委員 先ほどイギリスの制度について御説明された中村さんがおられないので他の提案者の方にお伺いしたいんですが、中村さんのお話ですと、イギリスはすべて被疑者が供述したことを録音、録画しているというふうに聞こえたんですが、本当にそうでしょうか。
○辻議員 すべてのケースについて漏れなく現実に運用されているかどうかにつきましては、原則としてそうされているということが調べの中では、調査の中では確認している事実でありますので、多くの場合はそうされている。だから、すべての場合に例外なくされているかどうかについては、改めてそれは調査の上お答えさせていただきたいというふうに思いますけれども。
○与謝野委員 イギリスも多分、調べていただくと、共犯者について供述するときは録画、録音はちょっとやめるわけです。これは、日本の弁護士会がイギリスから警察の御関係者をお呼びしてやったセミナーみたいなのがありまして、そのときに最後の質問で、イギリスでは共犯を自供させるときにはやはり録画、録音しているんでしょうとかいう質問があったら、それはとんでもない、それはないですということだったんで、その辺はやはり各国の制度をよく御研究になった方がよろしいんじゃないかなという気も私はいたします。
そこで、次の、弁護人の立ち会いの件でございますが、弁護人の立ち会いというのは、そこにいるだけなのですか、それともいろいろ口を出せるのですか。あるいは、取り調べられている人間が相談をすることができるんですか。ただ傍聴しているのか、あるいは助言を与え、助言を求められたら積極的に助言をする、どっちの立ち会いを言っておられるんですか。
○辻議員 まず、直接的には、弁護人の立ち会いの件につきましては、立ち会っている限りは適宜アドバイスができるという制度として考えております。
それから、前半の御質問の点で、共犯者の問題について、イギリスでは録音、録画はやめることになっているんじゃないかというふうにおっしゃっておりますが、日本の、今回の民主党のこの法案においても、録画については本人の申し出によって辞退することができるという制度になっております。ですから、委員がおっしゃるように、だといっても録音は残るじゃないかと。
ただ、そこは、その共犯者をめぐる犯罪というのは、親分がいて子分がいてというふうに必ずしも明確ではないわけですね。だから、共犯者の関係で、役割とか分担とか押しつけ合うことがあるわけですね。ですから、そこで、自分が刑事責任を免れたい、または役割を小さくしたいということで他に押しつける、そのような心理状態が働くし、現にそれが、人間の行動原理として、人情的に考えても、ある意味でリーズナブルな動きなわけです。
だから、やはりそういう中で、共犯者に限って委員はいろいろおっしゃっていますけれども、それによって解明されない問題が仮に出たとしても、しかし、政策的な優位性として、共犯者が押しつけ合って、そこで虚偽の役割が問題になったり、虚偽の自白がとられていく、それはやはり刑事裁判を大きく言って誤らしめるものになる、冤罪を生み出す根拠になる。そういう意味におきまして、やはり政策判断においてどちらを優位に考えるのか、そういう問題なのではないかと思いますが。
○与謝野委員 そこで、問題は、もともと、司法警察員あるいは検察官が被疑者の取り調べを開始するときには、何らかの形で黙秘権の存在を取り調べられる側に告知をするわけですが、立ち会っている弁護士は、取り調べられている人間に真実を話しなさいと慫慂するのか、あるいは、あなたは黙秘権があるんだからしゃべっちゃいけないというふうに慫慂するのか、どっちの役割でそこで立ち会っているわけですか。
○辻議員 これは、判例、学説で多く議論になっているところであります。学説の定着した意見としては、弁護人の側に真実を慫慂する義務はないということでほぼ一致を見ているというふうに思います。
ただ、個々のケースに当たって、その弁護人の方がどのように動かれるのか、どのようにされるのか、それは依頼者の方との信頼関係の問題だし、場合によっては弁護士の倫理の問題にかかわってきておりますが、公の意味においては、真実を述べよというふうに慫慂する立場に弁護人としてはない、そのような義務もないというのが正しい考え方ではないか、このように思います。
○与謝野委員 そうすると、むしろ、立ち会っている弁護士は、自己に不利な供述は強要されない、だから、あなたはその部分はしゃべらない方がいいですよということを言うために立ち会っているわけですか。
○辻議員 それは被疑者の方の権利を真っ当なものにするために、リーガルアドバイスをするために弁護人はそこに立ち会っているわけでありますから、適宜あなたには黙秘権がありますよということをアドバイスするというのは当然のことではないか、このように思います。
○与謝野委員 しかし、弁護士という非常に法律倫理の高い、なおかつ、先ほどから先生がおっしゃっている実体的な真実解明を弁護士の立場から求めている方が、むしろ被疑者の犯罪を軽くしようとかあるいは訴追を免れようとか、そういうことを慫慂するということは職業倫理に反しているのではないかと思うんですが、どうでしょう。
○辻議員 リーガルな範囲の中でのアドバイスをするというのが弁護人の立場であります。今おっしゃったような実体的真実の発見に協力するというのが弁護人の義務でもなければ立場でもない。
これはやはり歴史的に、私はこの裁判員制度の質疑の中でも触れさせていただきましたけれども、魔女狩り裁判とかいうことで、国民のすべてがあれは国民の敵なんだということで一人を血祭りに上げるときに、それはある意味で、客観的にだれが見ても外形的な構成要件事実に該当する行為を行っているということが見えたとしても、弁護人はその人の立場に立って、リーガルな立場で、例えば黙秘権がありますよということをアドバイスすることは当然のことであり、それは今の近代市民社会における、今の近代国家における弁護士の制度というのはそういうものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
○与謝野委員 悪いことをした人を逃がす手伝いをしているんじゃないかと、我々、司法の資格を持っていない者は、やはり弁護士というのは悪い人を助けちゃうんだなというふうに、そういうお話を伺うと、どういうわけか聞こえてしまうわけです。
立ち会う以上は、やはり被疑者たる者に真実を語らせるというのが立ち会った弁護士の職業としての責任ではないかという気が私はするんです。立ち会った以上はそういう責任があるのではないかと。ただ黙秘権を告知して、あなた、それをしゃべると裁判になって不利になるからしゃべらない方がいいよというようなアドバイスをすることが立ち会った弁護士の使命だとしたら、立ち会いは不要だろうと私は思うんです。
○山花議員 私は弁護士資格は持っておりませんが、一般論として申し上げますと、先ほども小宮山委員の質問に対してお答えしたとおりでありまして、つまりは、裁判というのは悪いことをしたかどうかわからないからやるわけでありまして、あくまでもその時点では無罪の推定が法律上あるわけです。
ただ、与謝野委員御指摘の、例えば弁護士さんがそこについていると全部黙秘させるように、させるようにするかといえば、必ずしもすべてのケースがそうではないのではないか。つまりは、ある意味、弁護士がむしろリーガルサポートとして、いや、こういうケースではちゃんとしゃべっておいて自白した方が罪になる可能性が高いですよ、そういうサポートをする可能性もある一方で、黙秘権というのは憲法上保障されている権利ですから、あなたにはそういうものがありますよと告知をするケースもある、両面があるのだというふうに考えます。
○河村(た)議員 これは、与謝野先生、歴史的教訓でして、やはり捜査機関とか権力は時として無実の者をこうやって引っ張って、とんでもないことを言わせて監獄へ入れてしまうということに対して、弁護人制度も歴史が発明した、そういう一環の中に弁護士の立ち会いもあるのであって、やはりそれだけ立場というのは、物すごい力が違いますから。
それと、共犯の問題だって、そんなもの、調べ官が、おまえらの仲間しゃべったんだぞ、調書を前に並べたろかと言われたときに、そこで、被疑者としてはどうやって確認したらいいんですかね、これ。だから、やはりそこは第三者がおって、同じように防御してあげるというようなことをしようじゃないかというのは、これは歴史的教訓だと思いますね。
○辻議員 例えば、もう二十年以上前になると思いますけれども、九州で、車で海の中に飛び込んで、荒木虎美さんという、これは被告人で、死刑判決があって、公判中に亡くなりましたけれども、これの弁護を買って出た人がいて、全国から抗議の手紙があって、いわば非国民であるということで弁護人が指弾されて、結局辞任を余儀なくされたという例があります。
例えば、この十年来を見ても、オウム裁判で、やはりこれは国民の敵だからそれを弁護するなんてけしからぬ、あんな者は弁護士として失格だというふうな声がやはり身近につい出てしまいますよね。だから、そういう中で弁護士が非国民とされる、刑事被疑者、被告人の弁護に立てなくなると、それは、ある意味では近代国家の自殺行為だろうというふうに思います。
委員がおっしゃっているのは、弁護人はそのときに真実を話せと言って、つまり、指弾する国民の立場に立って弁護活動を行えというふうにおっしゃっているのではないかと思いますが、それは逆の意味において弁護士の倫理に反する行為になりますので、あくまでもそういう異端者の弁護をやるために弁護士の制度というのはあるんだということの御理解をやはりしっかりいただきたいなと思います。
○与謝野委員 私も荒木何がしの事件のことはよく知っておりまして、これはほとんど状況証拠のみで殺人罪で起訴された件で、なかなか難しい事件だなと思っておりました。そういう方が起訴されて公判廷に立ったときに、当然のこととして弁護人がつくということ、これは、私選の弁護であれ国選の弁護であれ、きちんとした弁護士の方が弁護に立つというのは私は当然だと思いますし、どんな事件であっても法手続が適正に行われ、すべてが法と証拠に基づいて判断されるということをきちんと見ているという意味で、やはり弁護士の方がそういう被告人の弁護につくというのは、私は当然のことであろうと思いますし、また、これは憲法上の被告人の権利である。
その点は私は先生と全く意見は違わないと思っていますが、取り調べ室に入って弁護士が立ち会うという意味が全くわからない。何か、先生のお話を伺っていると、旧刑事訴訟法の世界を思い出してしまうわけです。やはり、新しい刑事訴訟法というのは、今の憲法を受けてよくできた訴訟法であって、他の国の関係法令と比べても、極めて人権を尊重した、適正な手続を盛り込んだ制度であると私は思います。もちろん、御指摘のように、その運用に当たって間違いがあるということも考えられないことはないんですが、刑訴法は非常によくできているんではないかと私は思っているわけです。
そこで、民主党が提案されるに当たって、弁護士の立ち会いがないときの供述調書は証拠能力がない、任意性もないし何にもないんだ、だめなんだ、こう言っていますが、今全国で、弁護士の先生、一万五、六千人しかおられない。犯罪者がこんないっぱいいて、みんな立ち会わないと供述調書がとれないという話になると、犯罪の捜査は弁護士の方の数で限定されてしまうという矛盾があるんですが、その点はどういうふうにお考えですか。
○辻議員 民主党の提案しております百九十八条の二項以下の点でありますけれども、「被疑者又は弁護人が求めたときは、弁護人の立会いを認めなければならない。」三項で、「前項の求めがあつたときは、取調べの日時及び場所は、あらかじめ、弁護人にこれを通知しなければならない。」ですから、被疑者、弁護人が弁護人の立ち会いを求めて、捜査機関の側が、何月何日の何時から何時までやりますよと。それに弁護人が出てこれない場合、これは違反にはならない。したがって、仮にそこで作成された調書については、三百十九条一項で証拠能力が否定されるということにはならないという構造になっております。
○与謝野委員 それじゃ、ひどいじゃないですか。民主党の案だと、弁護士の立ち会いじゃなきゃ証拠能力がないと言っておきながら、弁護士の都合がつかないときには供述調書をとってもそれに証拠能力があるという、そんな法律構成というのはあるんですかね。
○辻議員 要するに、法文としては、権利の要求があったときに立ち会わせなければならない。そして、日時、場所を指定する。それに立ち会えなかったときには、それは要求に機会を与えているわけだから、それはそれで、三百十九条一項の適用の問題にはならないということであります。
だから、委員がおっしゃるように、そうするとそこに間隙が生じているじゃないかということをおっしゃっておられるのかもしれませんけれども、そこは、この法文は法文としてまず提案させていただいて、そこについては煮詰めさせていただければと思いますが。
○与謝野委員 そこで、民主党がこの可視化法というものを提案された背景には、各国の捜査手法とか、起訴前のいろいろな捜査の方法、その他いろいろ御研究になったと思うんですけれども、どこの法制度を一番研究されたんでしょうか。
○辻議員 基本的には、イギリスを参考にして法案を作成させていただいております。
○与謝野委員 イギリスは完全な令状主義でしょうか。
○辻議員 日本においても、緊急逮捕とか、無令状で逮捕できる場合がありますよね。そこの幅の広さというか、場合の大きさ、小ささということについては、ちょっと今詳細にはお答えできませんけれども、イギリスにおいて無令状で身柄を拘束できる場合があるというのは事実であります。
○与謝野委員 日本の刑訴法は、何人も現行犯逮捕、緊急逮捕というのはできて、我々でも現に犯罪を犯した人を逮捕できる、そういう制度になっているわけですが、イギリスも恐らく警察は令状なしで人に来てくださいということを言えるというふうに聞いたんですが、イギリスの制度を御参考になったので、その辺は少しはっきりしていただけないでしょうか。
○辻議員 先ほど申し上げましたように、日本の緊急逮捕の場合は、憲法三十四条の例外的に無令状で逮捕権限を認められるという場合があります。イギリスにおいては、令状によらない逮捕、アレスト・ウイズアウト・ワラント、これはサマリーアレストとも呼ばれているようでありますが、一定の要件がある場合に、令状なしに逮捕権を行使できる場合があるという規定になっております。
○与謝野委員 イギリスは、勾留期間も非常に短くて、恐らく可視化ということよりは、その事前のいろいろな捜査手法を駆使していると思うんですが、イギリスの捜査手法というのは、何種類ぐらい御研究になったでしょうか。
○辻議員 今おっしゃっているのは、免責制度とかそういう趣旨のことをおっしゃっているんですか。(与謝野委員「そうです」と呼ぶ)それは、基本的にはイギリスを基本にしておりますけれども、当然それにそのとおり当てはめて倣っているわけではありませんから、今おっしゃられたケースについては、要するに、逮捕の場合は令状主義なり緊急執行なりそういうことが何種類あるのか、そういう御質問なんでしょうか。
捜査の手法というのは、どういう意味でおっしゃっておられるのか、それが、民主党が今回提案しております可視化、取り調べについて、これを自白偏重主義をなくするための弁護人の立ち会い権を認めたり、可視化を認めるということとどういう御質問が関連してきているのか、その辺を伺って、もう少しお答えをさせていただきたいと思います。
○与謝野委員 要するに、民主党と私の立場というのはどこが違うかというと、皆様方は、悪いことをしたかもしれないと国家機関が判断した人の人権を守れ、こう言っているわけです、悪いことをしたかもしれない人の人権を守れと。我々は、一般の善良な人の人権を守れと言っているわけです。
だから、一定の適正な手続のもとに捜査が行われ、公判請求が行われるということは当然だ、こう言っているわけですけれども、皆様方は、多くの場合捜査が間違うんだ、多くの場合適正手続がとられないんだということを