○山本委員長 次に、河村たかし君。
○河村(た)委員 皆様、御苦労さまでございます。河村たかしでございます。
二十分しか時間がございませんので速やかに、私は余り書いたものを見て読まないんですけれども、医学的な話ですから、淡々とひとつ短くお願いしたいと思います。
二村先生、きのうは手術の後で、きょうは大変に御苦労さまでございました。
まず、二村先生に、ボールペンをのみ込んだ受刑者など、そういうようなことを受刑者がするというふうに伺いますけれども、先生は、どういうためにこんなことが起こるのか、どういうふうに思われますか。
○二村参考人 私の実体験でございますが、やはり精神的にちょっと問題のある方で、私が実際手術をして摘出をしましたケースだと思いますが、もう何度かやっていらっしゃる方で、普通のこのボールペン、あれを上手に何かごくっとのみ込まれて、食道から胃に斜めに刺さった形でもう動かない。緊急手術を行いましたが。
皆さんの御意見を聞いたんですが、どうしてこういうことが起こるか、多分、手術を受けて病舎に入るといわゆる仕事をしなくていいとか、何かそういうのが理由らしいというようなうわさを聞いたんですが、もう何度か傷がありました。何回でも手術を受けて、そういうことをやっているということで、まあまともな感覚の方ではないというふうに思いましたけれども、そういうことが時々あるということです。
○河村(た)委員 それから、十二月の事案、ホースで水をかけた事案です。
検察は、豚に麻酔をかけて、〇・六キロ、平方センチ当たりの水圧で、むき出しの肛門部に直接当たるよう放水実験を行ったと言われておりますけれども、この実験と十二月の放水事案は、実験の条件面で比較しますと、一番、麻酔がかけられた豚は外部からの刺激による肛門括約筋の収縮が働くか否か、それから二番、生理学上、豚は肛門がむき出しであるが、うつ伏せになってひざを立てていない人間の肛門部は臀部の奥に隠れているのではないか、それから三番目、受刑者の肛門部には実際には斜め上方から放水が当たっており、角度的にも豚は真っすぐですから豚の実験とは違うなど、私のような医学の専門家でなくとも、これを実際に保護房で行われたことと比較することには無理があると思うけれども、専門家のお立場からはどうかということ、お願いします。
○二村参考人 豚にどういう麻酔法をされたかちょっとわかりませんが、麻酔をかけたというふうに聞きましたが、多分全身麻酔だと思います。そうしないと、豚を固定してああいう実験をやることはできないと思います。全身麻酔をかけますと肛門の括約筋は弛緩しますので、意識のある方と同じ条件でやりましても全く違った反応が起こるというふうに思いますので、実際に実験をやるときには、条件設定を誤らないようにやることが大切かなと思いますので、あの実験に関しては私はちょっと疑問を持っております。
それから、豚の直腸部がどういう角度になっているか、私は動物のことはちょっと不確実ですが、実際、人間の場合は、直腸のいわゆる角度といいますか、おしりからいいますと少し背中寄りの方に、骨盤の後ろの方にカーブしておりますので、腹ばいの状態で斜め上からですと、角度の問題で、こうなってこうなって、ちょっとなかなか力がうまく伝わらない可能性があるということ。
それから、あの豚の実験の写真を拝見させていただきましたが、今御指摘のように、おしりがぴっと伸ばして、飛び出しておりますので、腹ばいになっている人間とははるかに異なった物理的な形になっているかなというふうに思います。
実際、人間の肛門というのは、腹ばいの状態ではおしりの筋肉に隠されて外からはもちろん見えませんし、ある距離から、斜め方向からそこにアプローチするのは大変困難かなというふうに思いますが。
○河村(た)委員 放水後、受刑者を診察し肛門部の裂傷の縫合手術をされた医師は、二村教授の部下であると聞いておりますけれども、診察や手術をしたときの受刑者の状況や裂傷の程度について、話を聞かれたことはありますか。
また、聞かれたとしたら、肛門部の裂傷の状況についてお答えください。時間が短いですから、先生、本当に短くひとつ。
○二村参考人 私は、新聞報道されて初めて、ああいうことがあったということを聞きましたので、その後に聞きました。そうしましたところ、メスで切ったようなシャープな傷ではございませんが、ぴしっと、ぎざぎざとしたような、そういう傷があったというふうに聞きました。
もう一点、何でしたか。(河村(た)委員「それでいいです」と呼ぶ)いいですか。
○河村(た)委員 それがもしこのような、これは当時入っていた本物です。これは、今は違う。今あるのはぐにゃぐにゃのですけれども、変わっておりますけれども。このばりばりに割れた破片が、これがあったことを目撃した人がいまして、例えばこういうような形のがあって、こういうものがもし肛門の中に入った場合に、そのぎざぎざになった状況というんですか、それから、肛門が五時と十時のところに切れたというふうに聞いていますけれども、それから肛門より十一センチのところが五センチ、そういうようなことで、これが自傷に使われたとされた場合、それの形状というのはぴったりするものでしょうか。
○二村参考人 あくまで推測ですが、一つは、これをどうやって肛門に入れるかということですが、どうも聞いたところによると、ふん便を出すためにやるとかいろいろ話を聞きますが、直腸指診といいまして、私たちは指で診察をするんですが、必ずゼリーを使って、油のようなものをつけませんと抵抗があってなかなか指も入れられないんですが、こういうものをもし入れようとすると、ある程度の、相当な摩擦の抵抗があるかと思います。
ですから、もしも無理やり入れれば、肛門の外にも中にも相当な傷がつくんじゃないかなというふうに思いますが……(河村(た)委員「そのぎざぎざとなったところですか」と呼ぶ)そういうふうにはなるかと思います。油をつけてやるとちょっとスムーズになるかもしれませんが。
どうやって入れたかにも、条件設定がいろいろ難しいかと思いますが、そういう傷がつくことは、可能性はあるかと思いますが。
○河村(た)委員 ありがとうございます。
それでは、検察は、その豚による実験で、豚に、一つのに七リッター、一つのに三・五リッターの水がたまっていたと。
人間においても、今言いましたように、肛門の奥十一センチのところが五センチ直腸裂開というんですか、仮にそういう水が入ったとすれば、その痕跡として、肛門部の表皮剥脱というんですかとか、腹に相当な水がたまると思われるんですけれども、それらについて、執刀した医師に確認されたことはありますでしょうか。
また、確認されたとしたら、その結果と、どういう診察の結果でそれが発見されたのかということをお答えください。
○二村参考人 あの事件は、新聞報道で見て、私は最初からちょっと疑問を持っていましたので、ちょっと聞いてみたんです。
一つは、消防用のホースで、本当の消防自動車から出るようなあんな強烈なのでおしりから注水しますと、穴があくことは間違いないなと思いますが、五センチの穴があけば、強烈な勢いで、水圧で入れれば、おなかの中に何リッターの水がたまるであろうかということは想像を絶して、いわゆるカエル腹といいましょうか、おなかがぽんぽんになって破裂するぐらいの水がおなかの中へ入るんじゃないかな、そんなふうに想像しましたので、あのおしりの手術をやったときはどういうふうにやったかと聞きましたところ、全身麻酔であおむけでやりまして、砕石位といいまして、あおむけで足を上げてやるんですけれども、おしりがよく見えるような状態でやるんですが、全身麻酔でやりましたので、そのときにおなかの状況というのはすぐわかりますから、おなかがはれておるようなことがあればすぐ気がつくと思います。そんなことがあれば、何リッターも水がたまっておれば普通はすぐわかりますが、そんなことは全くなかったと言っていました。
それから、証拠が何かないかと言って聞きましたところ、デジタルカメラでおしりの傷の写真を撮るために、証拠の写真を撮るためにデジカメを操作中に、何かビデオのセッティングになっておったらしくて、その手術の全体が写真には撮れておるから、それを見ればわかるんじゃないかなというようなことはちょっと聞きましたが、今それがどこにあるか知りませんけれども。そんなことはちょっと聞きました。
いずれにしましても、おなかがはれておるとかそういうようなことは全く気がついていないというふうに言っておりました。
○河村(た)委員 今ちょっと一応、二村さん、誤解されるといけませんので。いわゆる高圧ホース、筒先はいわゆる出初め式に使うものだったんですが、出た水は、検察が言っているのでもいわゆる〇・六キロパー平方センチということで、大体、東京都の水道の水が一キロですから、東京都の水道の水の六〇%というところでございまして、ざっと出た程度という、ここから大誤解が始まっているということでございます。
そういうことですから、そのような水で、ちょっと訂正して言ってもらえませんか。ホースだとすればと言いましたけれども、そういうことじゃなかったものですから、今ちょっと答弁を。
○二村参考人 低水圧では、やはり水圧が低かったり流量が少なければ、起こる危険性は少ないと思います。
それから、その後、実は文献検索しましたところ、同様な事例が約十年前に報告がありました。
酔った方が、温泉地で、温泉で水面上七十五センチまで噴き出す五センチの筒の水がばっと出るところへ酔っ払って座って、おしりが何かはまり込んでしまって事故が起きたという事例が報告があったのを見ましたところ、やはり直腸から上の腸へ行く移行部というのが一番当たりやすいんですが、ここからこんなのがぼんと出てくるところへちょうど座ったために、おしりにまともに当たって破裂した、緊急手術をやったときにはおなかの中に水がいっぱいたまっていた、そういうふうなことが書いてありましたので、やはり水を入れて破裂するようなことがあれば、当然そういうことが起こるんじゃないかなというふうに思いましたけれども。(河村(た)委員「状況が違いますね、今のふろのは」と呼ぶ)ええ。
低圧だとやはり起こりにくいかと思いますし、そのかわり、圧が低くても流量がたくさんあれば起こる可能性があるかと思いますが、その辺は、実は外国の文献も探してみましたところ、戦前にもう既にそういう動物実験をやっているのがありまして、どの辺、大腸の部位によっていろいろ圧が違うというようなこととかいろいろな実験結果はありますので、調べようと思えば、いろいろな手を使ってやれるかと思います。
○河村(た)委員 今のケースは、ふろで本当におしりをぴったりつけた状況で、ウォシュレットよりすごいものですね。だから、ちょっと今の人間とは違うと、そこが違うということだけ言ってください、会議録に残りますから。
○二村参考人 条件設定が全く違いますので、さっきの豚の実験と、実際のあの名古屋刑務所で起こったのと、私が今申し上げたおふろでなったのと、全くそれぞれ違いますので、ああいうことが誤って報道されると誤解が生じるかと思います。
○河村(た)委員 それから、いわゆる革手錠による事案とされていることですけれども。
まず、九月の話。九月になりまして、これも先生のところにおみえになるドクターですけれども、手術されまして、重症、腸を四十センチ切ったと言いますが、実はこれは間違いでして、腸間膜が五センチ切れて、そこから血管が出ておる。それで、一応これを、壊死するといかぬからということで、手術のために四十センチ取ったということなんです。腸間膜が切れたと。
五月の事案もそうなんですけれども、腸間膜が切れるというのは、革手錠で締めて起きるものかどうかですね。革手錠、二十センチ締めるといいますけれども、二村さん、もし、そこで、僕は本当はきょう持ってくるところだったんですけれども、自分のベルトを二十センチ先まで仮に引くということですから。そんなことができるのかできないのかということでございまして、そういう革手錠、僕は当然できないで、十センチまでなんです、実際引いたのは。十センチでもかなり苦しいんです、これ。そういう状況で腸間膜というのが切れるものかどうかということを、ちょっとお教えをお願いします。
○二村参考人 腸間膜の損傷というのは、実は私も若いころに緊急の医療をやっていた経験が三年間ありますが、交通事故が圧倒的に多いです、原因としましては。
どういうときに起こるかといいますと、やはり、自動車のバンパーとかあるいはミラーとか、いろいろなものが、おなかに鈍的な圧力で、があんと急激に当たったときに、腸管という管は当たったときに自然とこういうふうに排除されるんですが、腸間膜というのは、おなかの後ろ側にくっついていまして、それが背骨との間にぼんと挟まったときに膜にぴっと亀裂が起こる、そういう現象でありまして、何らかの鈍的な圧力が急激に加わったときに起こりやすいと思います。ですから、ああやって、ぎゅっと、ゆっくりと締めたときに起こるかどうかは私は全く知りません。まあ、実験をやってみるとわかるかと思いますが。
いずれにしても、急激な外的圧力が加わったときに起こりやすい、背骨との間に挟まって傷がつくというのが受傷機転になると思います。
皆さん御存じかと、事例としましてよくあるのは、昔、シートベルが二点だったですね。あのときには結構たくさんありました。シートベルトが、急激にがあんとなったとき、運転者が飛び出すぐらいの勢いで、ここが締まりますと起こりますので、それで腸管損傷とか腸間膜損傷が多かったために、それで今、三点になったんですね。あれで、ここに余り急激な圧力が加わらなくなって、減ってきたと思います。
○河村(た)委員 ということは、今、シートベルトというのは運転手が飛び出すぐらいの急激な力ですから、引いても、受刑者というのは、みんな力を入れていますしね、ほとんど。私は正直言って、とても起こらないと。十センチ、二十センチ、では、人間を二十センチ仮に締めたら、どうなりますでしょうか。呼吸ができなくなるんじゃないですか、横隔膜の関係で。その二点をちょっとお答えください。
○二村参考人 継続的に二十センチも締めると呼吸がどうなるか、想像を絶するんですが、いわゆるおなかというのは息を吸うときには横隔膜がぐっと下がりまして、それなりのリラックスした状況でないと深呼吸、もちろんできませんので、ある程度の呼吸困難がずっと継続的に起こったような異常状態になっておるんじゃないかなと思いますし、継続的に、じっとそういう状況が続いたときに腸間膜が傷つくかどうかは、ちょっと私にはわかりませんですね。
ただ、先ほどシートベルトの話をしましたが、ここにベルトがあって、手がこういうふうにあったときに、交通事故を想定するとわかるんですが、転倒するとか何かで、手が地面に当たるような転倒事故でもあれば、これを契機に、ごんと当たって腸間膜損傷が起こる可能性はあるかな。ちょっと、推測の域を脱しませんが。
○河村(た)委員 私も実はそう思っていまして、五月の方は保護房内で立っていたという話もありまして、こういうふうにしていますと、要するに、人間だと手がつっていたり、倒れたときのイメージが大分違うんですけれども、支えるところは一切ありませんから、どんといきますね、これ。それで、ここでいって、ここが腹に当たって、今、ドクターが言われた、二村さんが言われた、それで腸間膜が切れたんではないかなと、これは一つの推測ですけれども。
そういうことは、やはり、そのくらいならあり得るということですね。もう一回お願いします。
○二村参考人 交通事故の事例ばかり申し上げてあれですが、やはり背骨と外的圧力との間に挟まって起こるわけですから、急激なことががんと起こると非常に起こりやすいと思いますが、じわっとなったときにどうなるかはわかりません。
○河村(た)委員 まあ、慎重に言っておられるんだろうけれども、わかりませんということは、今までの先生の長い手術歴とかの中であったことはありますかね、少なくとも。
○二村参考人 胴を縮めた状態で長時間そのままに置いておくというのは見たことも聞いたこともありませんので、体験が全くないというふうにしか申し上げられないですね。だから、やはり実験をやってみるとはっきりわかるんじゃないかなと思います、起こるかどうかは。事例を見たことも聞いたこともありません。
○河村(た)委員 ということでございますので。
僕は、受刑者の人権も非常に大事にしておりますし、反対に、今、刑務官の方というのは、ある意味では受刑者ですよ、未決でなんですね、これ。だから、やはり本当に、国の行政というか一番末端のところで、体を張って国の秩序を守ろうと努力されている皆さんが、こういう状況で、私は検察も信じておりました、検察はやはり証拠に基づいて非常に厳正に公益を追求してくれるところだと、まあ、今でも信じておるんですけれども。こういう状況で、八名の方が非常に苦しんでおられるということなんですね。
だから、ぜひ先生もいろいろなところへ出て、ちゃんと事実を言っていただく。先ほど言われましたけれども、いろいろな統計を出されて、いろいろな問題があることもこれは事実。だけれども、やはり個別事案をきちっとやっていかないと、そこから法務行政のいろいろなことがわかってくるんだよね。
そんなことで、二村先生は刑務所の医療の数少ない経験者ですので、ぜひいろいろなところでお話をどんどんしていただきたいなと思いますが、一言だけお言葉をいただいて、終わります。
○二村参考人 私たちの今の領域では、事実に基づいた云々という、エビデンスに基づいた医療をやれというのが合い言葉になっております。
何か事を判断するとか事例を評価するということを行うときには、厳正に事実の裏づけをしてやることがやはり大切かと思います。ですから、今回、私、個人的に新聞報道なんかを見ていまして、本当にそうかということを、常に疑問を持って見ておりますので、もし今後もこういう席で行うのであれば、きちんとした事実で検証していただくのはぜひやっていただきたいなというふうに思っております。そんなものでよろしいでしょうか。
○河村(た)委員 どうもありがとうございました。
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